すしろぐ

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恋愛は時間が解決するけれど、その時間が経つまではどうしたらいいの 現象

昨日と先一昨日に「花束みたいな恋をした」という映画を観た。予告に一目惚れし、坂本裕二の脚本ということで期待値はかなり高かった。

 

結果......

 

ぶちのめされた。

 

単調に解説すると、好きなものが全く同じ理想的な出会いをした2人が、社会に出るとともに現実というものを見て、すれ違い別れるという、本当にありふれたお話。

大学時代につきあいたてのまま安易に同棲をしたこと、好きなものが少々同じだけで運命めいたものを感じてしまったこと、言葉の「言い方」など小さなことが喧嘩の原因になったこと。仕事とワタシの両立ができなくなったこと。誰しもが憧れる人気俳優2人が、誰しもが一度は経験したほろ苦い経験を淡々と演じる。

 

私の通っている大学の最寄駅ということ、ちょうど就活を終えた大学4年生であること、サブカルに傾倒してる女子に見られたいこと、長く一緒にいた恋人と別れたことなど、麦くんと絹ちゃんの出会い並みのマッチングのフルコンボで、他人事としてみることは出来なかった。

 

長く一緒にいた1つ年上の恋人は、とても穏やかな人だった。

就活で苦しんでいる時、麦くんのように味方をしてくれたし、泣いている私をあのパジャマのようなラフな出立ちで迎えにきてくれることもあった。

麦くんと絹ちゃんほど趣味は似ていないけれど、初対面からなんとなく親近感を覚える彼で、2人で映画を見に行ったり、カフェに行ったり、沢山の思い出があった。

徒歩15分のスーパーからの帰り道は、少なくとも私にとっての何より大切な時間だったことも同じ。

 

就職し、社会人となって、仕事が忙しくなっても、私が作った夜食を米の1粒残さず食べてくれる、「おいしかった」のおまけ付きの彼が大好きだった。

時間が経って、初めの新鮮さや、ドキドキや、盲目的に恋をする気持ちが消えても、そこには今まで2人が平行に歩いてきた道とこれからも歩幅を合わせる思いやりがあると信じて疑わなかった。

 

だからこそ、別れを切り出された時は直ぐに理解することが難しかった。

IKEAで組み立て式の家具とか買って、奮発して新しい家電も買って、私が後から真似っこしたお揃いのオールドスクールのスニーカーに、キッズサイズも並ぶ日が必ず来ると慢心していたからだ。

 

好きな気持ちは形を変えることこそあれど、なくなることなんてあるんだな、とぼんやり思った。

縋り付いて泣きつきたいけど、そういうところが嫌だったんだなと思った。

 

穏やかなところに惹かれて好きになった彼は、皮肉にも別れ方すら穏やかだった。

 

 

1度目の映画は2人で見た。

麦くんと絹ちゃん、どうしたら別れなかったんだろうね?と悲しそうにする彼に、私たちもどうしたら別れずに済んだのかな?と尋ねようとして、2人はもともと価値観が合わなかったんだよと答えた。

そんなことないよ、きっと出会うタイミングと色々な出来事が起きるタイミングなんだよ、と言われた。

タイミングか、と思った。

 

 

麦くんと絹ちゃんが再会してもお互いを懐かしむことなく爽やかに見えない場所で手を振っていたのが印象深かった。今の私はきっとできないと思う。新しい恋人がいることに落ち込み、不幸になれ!と思ってしまうかもしれない。今は、恋愛は時間が解決するのは間違いないけれど、その時間が経つまでどうしたらいいの現象の真っ最中だ。

 

でも、花束みたいな恋を私も彼にさせてもらっていたのだから、いつか何年後にどこかで会えたら、見えないかもしれないところで静かに手を振って、「がんばれ!」と言える人になりたいと思う。f:id:uninosushi:20210206201215j:image