すしろぐ

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考えないようにしようと思う時はすでに考えないようにしようと考えている現象

 

大学生活が最後ということで、いままで全く関心がなかった、旅行というものに行った。

選んだ場所は沖縄。理由は、単純。あったかくてのんびりしてて何より東京からだいぶ遠いというただそれだけ。

ウキウキと飛行機と宿の予約をとったはいいが、移動手段がなかった。

結局、旅行の2日前にとった、しかも原付の免許で身一つで旅に出ることにした。

 

初日。早速レンタルバイクの営業時間を過ぎ、移動手段を失った私は人生初のヒッチハイクに出た。

意外と優しい人が多いもので、無事宿に着いたのは日付が変わる頃だった。

慣れない飛行機に疲れたこともあって、死んだように眠った。

 

2日目。何も用事がなければ結局何もしないよなあと思い、ダイビングのライセンスをとる予約をしていた私は、またもや親切な宿のおじさんに車で市街地まで送ってもらった。

初のダイビングは浅い海から始まった。

こんな重いタンクを背負って、本当に水上まで戻れるのか?という疑問を持つより早く、実習が始まったので、恐怖を感じながらも潜った。

酸素ボンベをつけるのは初めてだった。

水の中に入って、透明度に驚いた。そのあと、酸素ボンベで吸った1吸い目の空気の新鮮さが忘れられない。

スゥーーーーという音と共に地上にいるよりも冷たくだけどなぜか落ち着く空気が私の中に入ってきた。そのとき、初めて気づいた。

あぁ、私は東京でずっと息が詰まっていたんだな。私は、息が吸いたかったんだ。と。

その日は胸がいっぱいで、早々に夜ご飯を地元の居酒屋で済ませて、宿に帰った。だけどなんだか眠れなくて、このワクワクを1人で抱えたまま寝たくなくて、市街地の水タバコ屋へ1人で散歩した。15分で着く道をなぜか1時間もかけて、夜の街へ繰り出した。

 

3日目。ダイビングは朝が早い。ほぼ寝てないまま、またあのスゥーーーができると、ワクワクしていた。少し市街地から離れた穴場と言われるダイビングスポットへ。もう準備や浅瀬は手慣れたもので、2日目というのに意気揚々と水の中へ向かった。水中から見た水面はキラキラと光って、キラキラしているのに眩しくなくて、来世は魚になるのもいいなと思った。潮をたっぷり被った体で原付に乗るのはなかなか不愉快なものであったけれど、そんなことはどうでもいいくらい、興奮していたのだ。

この日はやりたいことがたくさんあって、沖縄の美術館へ行ったり、市街地をあてもなくツーリングしたり、観光らしいことをした。

その夜は、元々行きたかった20km先の水タバコ屋へ原付を走らせた。途中の道で、夜景がすごく綺麗で、「夜景がすごく綺麗だよ」と連絡したくなった人がいた。そういえば、美味しいステーキを食べた時も、酸素ボンベのスゥーーーも、美術館にあった写真展のすごく心に残る写真も、天気がすごく良くて、意外と沖縄の水タバコ屋も捨てたもんじゃ無いんだよということも、伝えたい人は同じだったと思い出して、少し泣いた。泣いたけれど、原付の音と風がなかったことにしてくれた。

 

 

4日目も、1〜3日目の書いてない時間も本当はもっと心で思うことがたくさんあったのだけれど、うまく書くことができないから、また別の機会に。

 

今回の旅行は、実は卒業旅行のために、実は一緒に行きたかった人がいて、でも、それはもう叶わないので、ありったけの贅沢をした。

1人で行ったはずの旅行は、2人で行きたかった場所と2人で共有したかった感情で溢れていて、まるで1人旅にはならなかった。

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